
寒い季節、暖かい部屋から寒い場所に移動したとき、あるいはその逆の状況で、急激な温度変化によって体に大きな負担がかかることをご存知でしょうか。これが「ヒートショック」です。一見些細に思えるこの現象が、実は命に関わる重大な健康リスクとなっています。
ヒートショックとは?どんな症状?
ヒートショックは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動することで起こる健康障害です。特に冬場の入浴時に多く発生します。例えば、寒い脱衣所から熱い温度の浴室に入る際、血圧が急激に変動し、めまいや失神、最悪の場合は心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性があります。
実際の事例として、ある60代の方は、真冬の夜、20度に設定された居間から、暖房の入っていない5度程度の寒い浴室に向かったところ、激しい寒気やめまい、胸の痛みを感じ、意識を失いかけ、幸いにも家族がその異変に偶然気づき、大事には至りませんでした。この急激な温度環境の変化が、体に大きなストレスを与えたのです。
なぜヒートショックは起きるのか?体の中で起こる変化
人間の体は、急激な温度変化に対して血管の収縮や拡張で対応しようとします。寒い環境では血管が収縮して血圧が上昇し、暑い環境では血管が拡張して血圧が下がります。この変化が急激に起こると、体が適切に対応できず、血圧の乱高下が起きてしまいます。
特に冬の入浴時は要注意です。暖かい居間から寒い脱衣所に移動した時点で血管は収縮し、血圧が上昇します。その後、熱いお湯に触れると今度は血管が急激に拡張し、血圧が大きく低下します。この血圧の急激な変動が、心臓や脳に大きな負担をかけるのです。
ヒートショックになりやすい人の特徴
ヒートショックのリスクは、誰にでもありますが、特に以下のような方は注意が必要です。
高齢者は、血管の弾力性が低下し、温度変化への対応力が衰えています。また、血圧の変動を感知する能力も低下しているため、体調の変化に気づきにくくなっています。
高血圧の方は、もともと血管への負担が大きい状態にあるため、温度変化による影響を受けやすくなっています。血圧の変動幅も大きくなりやすく、リスクが高まります。
心臓病や糖尿病の既往歴がある方も要注意です。これらの疾患は血管の状態に影響を与えるため、温度変化への適応能力が低下している可能性があります。
寝不足や疲労が蓄積している場合、アルコールを摂取した後なども、体の調節機能が低下し、ヒートショックのリスクが高まります。
ヒートショックを甘く見てはいけない理由
ヒートショックは、年間推定19,000人もの命を奪う深刻な健康問題です。これは交通事故による死亡者数の約5倍にも及びます。にもかかわらず、その危険性は十分に認識されていないのが現状です。
特に注目すべきは、健康な人でも突然発症する可能性があることです。たった一度の入浴が、取り返しのつかない事態を引き起こす可能性があります。また、症状が突然現れるため、対処が遅れやすく、一人で入浴している場合は特に危険です。
さらに、ヒートショックは季節を問わず発生する可能性があります。夏場でも、エアコンの効いた室内から熱い浴室に入る際などに起こることがあります。
1
2





















































































