森岡毅氏「ジャングリア」への挑戦|学ぶべきマーケティング視点とは

データドリブンの意思決定プロセス

森岡氏の手法の最大の特徴は、徹底的なデータ分析にある。P&Gでの経験から培った「仮説構築・検証・実行」のサイクルを、エンターテインメントビジネスという感覚的になりがちな領域にも持ち込んだ点は特筆に値する。例えば、USJでは来場者の動線分析から購買行動まで、あらゆるデータを収集・分析し、それを施設設計やイベント企画に反映させた。具体的には、パーク内での滞在時間と消費額の相関関係を分析し、休憩スペースの最適配置や飲食施設のメニュー構成まで、データに基づいて設計し直している。USJの経営立て直しのため、「三段ロケット構想」を掲げ、弱みを強みに変える戦略として、ファミリー層に焦点を当てた戦略や、ハリーポッターを起用した新エリア戦略路線を打ち出し、2014年には開業年度を上回る1270万人の集客を達成、15年度も年間集客を更新し、16年度には1460万人に達している。

顧客体験の再定義

森岡氏が手掛けた改革の中で、特に注目すべきは「顧客体験の再定義」である。USJのハロウィンイベント「ハロウィン・ホラー・ナイト」は、その代表例といえる。従来の「仮装して楽しむ」という表層的なハロウィン体験を超え、「非日常の恐怖体験」という新しい価値を提供することで、若年層を中心に大きな支持を獲得した。これは、単なるイベント企画の成功ではなく、顧客の潜在的なニーズを掘り起こし、新しい体験価値を創造した事例として評価されている。ここでは森岡氏が考える「消費者インサイト」という分析手法が生きている。消費者インサイトとは、顧客の行動・感情・思考の深層を理解し、これに基づいてマーケティング戦略を建て付けることであり、顧客の深層心理を分析することで、何が求められているのかをダイレクトに実行することが大切なのであろう。

価格戦略の革新

価格戦略では、従来の常識を覆す発想が見られる。USJのエクスプレス・パスを代表例にとれば、通常なら「値引き」で集客を図るところを、逆に「価値に見合った価格設定」を行うことで、新たな収益の柱を確立した。これは、顧客が「待ち時間のストレス解消」に対して支払ってもよいと考える金額を、綿密な調査で見極めた結果である。この戦略により、パーク全体の客単価向上にも成功している。

組織改革とリーダーシップ

データ分析と並んで重要なのが、森岡氏の組織改革手法である。USJでは、従業員の意識改革から着手し、「お客様の期待を超える」という明確な目標を設定。現場スタッフから経営層まで、全員が同じ方向を向いて改革に取り組める環境を整備した。特に、現場からの改善提案を積極的に採用する仕組みを構築し、組織全体の創造性を高めることに成功している。

実践的マーケティング理論の確立

森岡氏の功績は、実践的なマーケティング理論の確立にもある。「森岡メソッド」として知られる彼の手法は、書籍やセミナーを通じて広く共有され、多くのビジネスパーソンに影響を与えている。特に、「顧客価値の最大化」「データに基づく意思決定」「実行力の重要性」という3つの要素を、具体的な事例とともに示した点は、実務に直結する知見として高く評価されている。

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地域活性化への挑戦

現在進行中の沖縄「ジャングリア」テーマパークプロジェクトでは、これまでの経験を活かしながら、新たな挑戦を行っている。沖縄の文化的特性と最新のエンターテインメント技術を融合させ、地域経済の活性化と観光産業の発展を両立させる試みは、次世代の観光ビジネスのモデルケースとなる可能性を秘めている。「ジャングリア」は、2025年の開業を目指して着々と準備が進められている。このプロジェクトでは、既存の手法に加え、デジタル技術を活用した新しい体験の創造や、環境負荷の低減など、現代社会の要請に応える新しい試みも含まれている。

沖縄「ジャングリア」の展望、「Power Vacance!!」コンセプトイメージ

沖縄県名護市の今帰仁村にて建設が進められているテーマパーク「ジャングリア」は、森岡毅氏が手掛ける新たな挑戦として、エンターテインメント業界からも大きな注目を集めている。この巨大プロジェクトは、単なるレジャー施設の建設を超えて、沖縄の観光産業に新たな価値を創造することを目指している。

「ジャングリア」は、2025年の開業を目指して着々と準備が進められており、森岡氏はこれまでの経験を活かしながら、沖縄の文化的特性と最新のエンターテインメント技術を融合させ、地域経済の活性化と観光産業の発展を両立させる試みは、次世代の観光ビジネスのモデルケースとなる可能性を秘めている。
このテーマパークプロジェクトでは、既存の手法に加え、デジタル技術を活用した新しい体験の創造や、環境負荷の低減など、現代社会の要請に応える新しい試みも含まれている。立ち上げには、沖縄という地域が持つ特別な可能性が大きく影響している。年間約800万人の観光客が訪れる沖縄は、すでに確立された観光地としての基盤を持っているが、その多くが自然や文化体験、ビーチリゾートを中心とした従来型の観光に留まっている。森岡氏は、この既存の観光資源に新たな体験価値を付加することで、沖縄の観光産業全体の底上げが可能だと考えた。
また、名護市と今帰仁村にまたがる立地選択においては、やんばるの森の豊かな自然の中で、大切な家族や恋人、友人と一緒に訪れた時に、一生の思い出となる」という思いが森岡氏から発せられている。日常の窮屈な世界から抜け、束の間の興奮と贅沢を体験するところから解放感を得る、それが「Power Vacance!!」というコンセプトイメージに繋がっている。

地域活性化という点でも大いに寄与できるであろう。那覇空港や主要観光地からやや離れた場所に、独自の集客力を持つ施設を建設することで、観光客の動線を新たに創出し、地域経済の活性化を図るという戦略的な狙いがある。
森岡氏がこのプロジェクトに込めた思いは、USJでの経験が大きく影響している。USJの再建では、既存の概念にとらわれない新しいエンターテインメントの形を追求し、大きな成功を収めた。ジャングリアでもその経験を活かし、従来の遊園地やテーマパークの概念を超えた、新しい体験価値の創造を目指している。

2025年の開業に向けて、具体的な施設内容や運営方針については順次発表される予定だが、すでに観光業界からは、沖縄観光の新たなランドマークとなることへの期待が高まっている。森岡氏の実績と革新的なアプローチは、このプロジェクトが地域の一観光施設を超えて、日本の観光産業全体に新たな可能性を示すものとなることを予感させている。

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まとめ

森岡毅氏の仕事の極意は、緻密に、顧客の本能にまで迫った分析アプローチと、創造性の融合にある。データに基づく冷静な分析と、大胆な発想による価値創造を両立させる彼の手法は、今後のビジネス界において、ますます重要性を増していくことだろう。そして、その実践の場となる「ジャングリア」テーマパークの行方は、日本のエンターテインメントビジネスの未来を占う重要な指標となるはずである。


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