クレームの出し方に人間性が出る
11. 最初から怒鳴り声で話し始める
何か不満があったとしても、まずは冷静に伝えるのが大人の対応だ。しかし、最初から声を荒げ、威圧的な態度を取る客は、問題解決よりも相手を屈服させることが目的になっている。このタイプには、決して怯まず、しかし挑発にも乗らない姿勢が重要だ。「お客様のご意見は承りますが、大声でのご指摘は他のお客様のご迷惑になりますので、落ち着いてお話しいただけますか」と、冷静に対応する。
12. 「責任者を出せ」が口癖
まともな説明を聞く前から「店長呼んで」「責任者出せ」と言う。これは交渉を有利に進めようとする常套手段だ。しかし、責任者が出てきても同じ説明をすることになる。まずは現場スタッフが丁寧に対応し、それでも納得しない場合に上司へエスカレーションするというルールを守る。すぐに責任者を出すと、「この人なら通じる」と味を占められる。
13. SNSや口コミサイトへの投稿をちらつかせる
「これ、拡散させるからね」「口コミに書くよ」という脅し文句。これは明確な恐喝行為に該当する可能性がある。こういった発言があった時点で、「お客様のご意見は真摯に受け止めますが、脅迫的な発言はご遠慮ください」とはっきり伝える。会話の記録を残し、悪質な場合は法的措置も辞さない姿勢を示す。
14. 金銭的な補償を最初から要求する
まだ事実確認もしていない段階で「返金して」「タダにしろ」と要求してくる。本当に問題があった場合は適切に対応すべきだが、最初から金銭目当てのクレーマーである可能性も高い。こういった場合は、まず事実確認を徹底し、お店側に非がある場合のみ、規定に沿った対応をする。感情的な要求に流されてはいけない。
支払い時に本性が現れる
15. 会計で細かく値段を疑う

レシートの一項目ずつに「これ何?」「こんなに頼んでない」と疑いをかけてくる。もちろん、本当に間違いがある場合もあるが、このタイプは確認作業自体を楽しんでいるか、何か値引きの材料を探している。レシートは詳細に出力し、注文時の伝票と照合できる体制を整えておく。POSシステムの記録を見せることで、客観的な証拠を提示できる。
16. 支払い方法で駆け引きをする
「クレジットカード使えないの?」と確認した後、「じゃあ現金で払うから値引きして」と交渉してくる。あるいは、大量の小銭で支払おうとする嫌がらせも。支払い方法は事前に明示し、値引き交渉には一切応じない。小銭での支払いは法律上20枚まで受け取り義務があるが、それを超える場合は拒否できる。
17. チップや心付けを渡して特別扱いを期待する
日本ではチップ文化がないにもかかわらず、「これで頼むよ」と金銭を渡そうとする。特別扱いを買おうとする行為であり、受け取ることで今後さらなる要求を招く。丁重に断り、「当店では全てのお客様に平等にサービスを提供しております」と伝える。
常連を装う危険な客
18. 「いつも来てるんだけど」と初見で言う
実際には初めての来店なのに、さも常連であるかのように振る舞い、特別扱いを求める。スタッフは顔を覚えているものなので、この嘘はすぐにバレる。「ありがとうございます、今後ともよろしくお願いいたします」と、特別扱いはせず通常通りの対応をする。
19. 他のスタッフの名前を出して威圧する
「○○さんはいつもこうしてくれる」と、他のスタッフを引き合いに出す。実際には存在しないサービスを、さもあったかのように語る。こういった場合は、「確認いたしますので少々お待ちください」と言い、実際にそのスタッフに確認する。虚偽であることが判明したら、「当店ではそのような対応はしておりません」とはっきり伝える。
20. 「オーナーと知り合い」などコネをちらつかせる
本当にオーナーと親しい客は、そんなことを口にしない。わざわざ言う時点で、虚勢である可能性が高い。もし本当だったとしても、スタッフとしては規則通りの対応をするのが筋だ。「承知いたしました。それでも当店のルールに従っていただく必要がございます」と、毅然とした態度を保つ。
カスハラから身を守る5つの基本原則
これまで20の特徴を見てきたが、こういった地雷客からどう身を守るかが最も重要だ。
記録を残す
会話の内容、日時、状況をできるだけ詳細にメモする。可能であれば録音や録画も検討する。証拠があれば、後々のトラブル時に自分を守る盾になる。
一人で抱え込まない
困難な客への対応は、必ず複数人で行う。一対一の状況を避けることで、エスカレートを防げるし、証人も確保できる。上司への報告も早めに行う。
感情的にならない
相手がどれだけ理不尽でも、こちらが冷静さを失った時点で負けだ。深呼吸をして、機械的に丁寧な対応を心がける。相手のペースに巻き込まれない技術を磨く。
ルールを盾にする
個人的な判断で対応を変えると、「あの人はOKしてくれた」と後々言われる。お店のルール、会社の規定に沿った対応を徹底することで、一貫性が保たれる。
逃げ道を確保する
明らかに危険を感じたら、無理に対応せず警察を呼ぶ選択肢を持つ。スタッフの安全が何よりも優先されるべきだ。
サービス業において、お客様は確かに大切な存在だ。しかし、それは理不尽な要求や暴言を受け入れることとイコールではない。適切な距離感を保ち、プロフェッショナルとして毅然とした対応をすることが、結果的に良質なサービスの提供につながる。地雷客を見極める目を養い、カスハラから自分自身を守る術を身につけることは、長くサービス業で働くための必須スキルなのである。
最後に覚えておいてほしいのは、あなたは尊重されるべき存在だということだ。どんな立場であれ、人として尊厳を持って扱われる権利がある。それを侵害する客は、もはや客ではない。
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