
サービス業に従事していると、どうしても避けられないのが「この人、ちょっと面倒かも…」と直感的に感じる瞬間だ。実はこの直感、かなりの確率で当たっている。長年の現場経験を持つスタッフたちは、ある種の「地雷センサー」を体得しているのである。今回は、そんなトラブルメーカーたちの特徴的な言動を20パターンに分類し、カスタマーハラスメントから身を守る実践的な知恵を探っていきたい。
入店前から漂う不穏な空気を察知せよ
1. 電話の段階で横柄な態度を取る
予約電話の時点で、すでに戦いは始まっている。「あのさぁ」「ちょっと聞きたいんだけど」といった馴れ馴れしい入り方から始まり、こちらの説明を遮って自分の要望だけを一方的に話す。この手のタイプは、電話越しでも相手を「サービスする側」として下に見ている傾向が強い。スタッフの名前を聞いておきながら、後から「○○さんがこう言った」とクレームの材料にすることもある。対策としては、会話の要点を必ずメモに残し、可能であれば録音システムを導入しておくことだ。「お客様との会話は品質向上のため録音させていただいております」というアナウンスだけでも、抑止力になる。
2. 開店時間よりかなり早く来店する
開店30分前にドアの前で待っている客は、一見すると「熱心なファン」に見えるかもしれない。しかし実際のところ、時間や他者の都合を考慮できない性格の表れであることが多い。準備中のスタッフに「もう入れないの?」「ちょっとだけなら」と交渉を始めるパターンも少なくない。こういった客には、開店時間厳守のルールを穏やかにしかし毅然と伝える必要がある。「準備が整い次第、安全に最高のサービスを提供するため」という理由を添えることで、正当性を強調できる。
3. 予約なしで「客なんだから平等に接しろ」と迫る
満席であることを伝えても「少しくらい大丈夫だろ?」「他の客を詰めればいいじゃない」と食い下がってくる。自分の都合が最優先で、お店の運営や他の客への配慮がまったく頭にない。このタイプへの対応は、代替案を提示することだ。「本日は満席ですが、明日なら○時から空きがございます」「近隣の系列店をご案内できます」といった形で、相手に選択肢を与えつつも、無理な要求は通らないことをはっきり示す。
注文時の言動に潜む危険信号
4. メニューにないものを執拗に要求する
「これとこれを組み合わせて作れるでしょ?」「前に他の店でやってもらった」といった要求は、一見すると柔軟な対応を求めているように聞こえる。だが実際は、特別扱いを要求することで優越感を得ようとしている可能性が高い。対応としては、できないことは明確に断り、代わりに提供可能な範囲での提案をする。「当店の方針として食材の安全管理上、メニュー外の調理はお断りしております」と、個人的な判断ではなくお店のルールであることを強調するのがポイントだ。
5. 値引き交渉を始める
飲食店や小売店で定価から値引きを要求してくる客は、サービスの価値を理解していない。「常連だから」「大量に買うから」といった理由をつけても、それは取引の条件ではない。こういった交渉には一切応じず、「当店では全てのお客様に公平な価格設定をしております」と説明する。一度値引きに応じると、エスカレートしていくのが常だ。
6. 注文を何度も変更する
注文してから「やっぱりこっちで」「あ、それもキャンセルして」と繰り返す。優柔不断というより、スタッフを振り回すことに無自覚な人物だ。厨房への伝達ミスやオーダーの混乱を招くため、変更は一度までと伝え、それ以降は新規注文として扱う旨を説明する必要がある。
滞在中の行動パターンに要注意
7. 過度に長居をして帰らない
閉店時間を過ぎても「もうちょっといいでしょ」「まだ飲んでるんだから」と居座る。他の客がいない状況で、片付けや清掃をしているスタッフの存在を完全に無視する。この場合、「申し訳ございませんが、本日の営業は終了しております」と明確に告げ、必要であれば店の照明を段階的に落とすなど、視覚的にも閉店を示す工夫が有効だ。
8. スタッフを呼びつける回数が異常に多い
5分おきに「すみません」「ちょっと」とベルを鳴らしたり手を挙げたりする。一つの要件をまとめて伝えることができず、スタッフを何度も往復させる。これは単なる配慮不足の場合もあるが、スタッフを「使用人」のように扱っている意識の表れでもある。対応するスタッフを固定し、「他にご用件はございませんか?」と先回りして確認することで、無駄な往復を減らせる。
9. 他の客に迷惑をかけても気づかない
大声で電話をする、備品を雑に扱う、通路に荷物を置く。自分の行動が周囲にどう影響するか、まったく想像力が働かない。こういった場合は、「他のお客様のご迷惑になりますので」という理由で、具体的な改善を求める。それでも改善されない場合は、退店をお願いする覚悟も必要だ。
10. 写真撮影に異常にこだわる
料理が来ても30分以上撮影に没頭し、冷めた料理にクレームをつける。スタッフに何度も撮影を頼み、気に入らなければ撮り直しを要求する。SNS時代ならではの困った客もいる。撮影は自由だが、料理の品質保証は提供直後までであることを伝える。また、他の客やスタッフを無断で撮影しようとする場合は、プライバシー保護の観点から断固として制止する。
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