今回の「にっぽん全国“シゴトのある風景”」では、福岡市天神でエリア最大級のパーソナルトレーニングスタジオ「BE NATURAL」を運営するETERNAL株式会社代表取締役、桂浩史郎(かつら こうしろう)さんにインタビューを行いました。桂さんは29歳で独立後、11年以上にわたり、日本のフィットネス・スポーツ業界が抱える過酷な労働環境や市場の課題に挑み続けてきた人物です。業界に変革をもたらすべく、日々情熱を持って活動されています。今回のインタビューでは、経営者としての働き方や価値観、業界への想い、そして起業を目指す方へのアドバイスなど、多岐にわたるテーマについてお話を伺いました。
業界を変え、社会に貢献する
——29歳で独立を決意した原動力とは—パーソナルジムの経営に挑戦しようと思われたきっかけを、ぜひお聞かせください。
「独立を決意したのは11年前、僕が29歳の時でした。当時から『独立したい』という気持ちがとても強かったんです。」
——29歳で独立を決意されたんですね!すごい行動力ですね。その時からパーソナルジムを考えられていたんですか?
「そうですね。もともと運動指導の仕事をしていたこともあり、業界を変えたいとか、社会に貢献したいという思いが根底にありました。その思いが自然と形になり、パーソナルジムの経営という道にたどり着いたんだと思います。」
——なるほど。業界を変えたい、社会貢献をしたいという思いが原動力だったんですね。
「はい。当時はまだ自分でも明確には意識していなかったんですが、今振り返ってみると、その夢やビジョンが僕の独立のきっかけだったんだと思います。」
独立の不安を乗り越えるために——経験と人脈で築いた成功の道筋
——独立される際、不安なことはありましたか?もしあれば、どのようにしてそれを乗り越えられましたか?
「実は、11年前に独立したときは、あまり不安を感じなかったんです(笑)。というのも、当時は謎の自信が勝っていて、『なんとかなるだろう』と思っていました。ただ、振り返ると、もっと準備をしっかりしてから挑んだ方がよかったなと思いますね。それから先は本当にいろいろと大変でした。」
——最初の独立では自信が大きかったんですね!では、3年前にスタジオを立ち上げた際はどうでしたか?
「3年前は正直、不安が大きかったですね。年齢を重ねて経験を積むにつれて、やっぱり慎重になりました。その分、徹底的にリサーチして不安を払拭する努力をしました。この業界の先輩方や先生方に、どのように経営してきたのか意見を伺ったり、アドバイスをいただいたりしました。」
——具体的にどんなリサーチをされたんですか?
「福岡にあるジムはほぼ全部訪れましたね。サービス内容を確認したり、実際に話を伺ったり。そうやって業界の動向を学びながら、周囲の方々に支えられて不安を乗り越えることができました。」
——徹底した準備と、人とのつながりが大きな助けになったんですね!
徹底的な情報収集が成功の鍵——業界全体を見渡し、自分の強みを見極める
——起業の準備をされる中で、特に力を入れられたことや工夫されたことがあれば教えていただけますか?
「起業の準備では、とにかく情報収集に力を入れましたね。自分がいる業界を客観的に理解し、生き残っていくために、まず業界全体の流れを把握しようとしました。福岡だけでなく、日本や世界ではどんな動きがあるのかを知り、その上で、自分には何ができるのか、自分の強みをどう活かせるのかを見極めていきました。」
——具体的には、どのような方法で情報収集をされたんですか?
「いろいろな方法を試しました。人に会うことはもちろん、業界の団体や学会の勉強会に参加したり、業界誌を読んで最新情報を学んだりしました。また、福岡だけでなく他県にも足を運び、現場を見たり、直接話を聞いたりもしました。こうした地道な情報収集を通じて、自分の立ち位置を明確にしていったんです。」
——かなり徹底された情報収集ですね!それが成功の基盤となったわけですね。
「そうですね。やはり、業界全体を深く理解することが、次の一手を考えるための大切な土台になりますね。」
——確かに。情報収集をしっかり行うことで先を見据えた判断がしやすくなりますよね。
「その通りです。特に新しい情報というのは、欧米から東京、そしてそこから地方に広まっていく流れが多いんですよね。だから、先に欧米の情報を知っておくと、この福岡では特に、5年から10年先の業界の動きが予測しやすくなるんです。」
——欧米の情報を先取りすることで、地方での動きが見えてくるんですね!それは非常に戦略的ですね。
「はい。そうすることで、先手を打って準備ができるようになりますし、自分のビジョンをより明確に描けるようになりますね。」
日本のフィットネス市場を変えるビジョンと取り組み
――パーソナルジムの運営だけでなく、メディアやキャスティング事業にも取り組まれている背景には、どのような想いや理由があるのでしょうか?
「そうですね、大きく2つの理由があります。まず1つ目は、リスクヘッジのために事業を多角化するという、ビジネスの王道を意識している点です。これはどの業界でも重要な考え方ですよね。」
――なるほど、確かにリスクヘッジは大切ですよね。もう1つの理由は?
「2つ目は、日本のフィットネス産業に変革を起こしたいという想いです。実は日本のフィットネス市場って、まだまだ規模が小さくて成長の余地が大きいんです。」
――そうなんですか!日本と欧米ではそんなに違いがあるんですね。
「はい。例えば欧米では、運動施設に通う人が多くて、フィットネス市場が非常に大きいんです。日本でもそのレベルにまで市場を広げていきたいと考えています。そのためには、飲食やメディアなど他業界と連携して、健康産業全体への関心を高める必要があると思っています。」
――確かに、他業界との連携で広がりそうですね。そしてキャスティング事業についても教えていただけますか?
「もちろんです。この事業には、フィットネスモデルを日本で広めたいという想いがあります。欧米では『フィットネスモデル』という職業が確立されていて、スポーツブランドの広告などに登場するのが一般的なんです。でも日本ではまだその認知度が低いんですよね。
――確かに、日本ではあまり馴染みがないですよね。
「はい。だからこそ、その文化を日本にも根付かせたいと考えています。キャスティング事業を通じてフィットネスモデルが活躍できる場を作り、日本の健康産業をさらに盛り上げていきたいんです。」
リサーチとメモの力が生む成長の秘訣
――福岡市天神にエリア最大級のパーソナルトレーニングスタジオを開業され、ここまで事業を成長させた要因はどのような点にあるとお考えですか?
「そうですね、一番の要因は『リサーチ』と『メモを取る習慣』だと思っています。」
――メモを取る習慣ですか?
「はい。独立した当初から、気づいたことやアイデアがあればすぐにメモを取るようにしてきました。特に、経営者目線で感じたことや課題、ヒントなどを記録しておいて、後から振り返り、フィードバックするようにしているんです。これを繰り返すことで、常に改善点を見つけて対応できる体制が整ってきたと思いますね。」
――なるほど。そうした地道な習慣が大きな成果を生んでいるんですね。
「そうかもしれません。それに、僕はリサーチが趣味なんですよ。」
――リサーチが趣味なんですね!それはどういう形で仕事に活きているんですか?
「仕事だけじゃなくて、日常生活で疑問に思ったことも徹底的に調べる癖があるんです。その調べた情報もメモに残しておくようにしています。これが結果的に、経営や事業運営に役立っているんじゃないかなと。新しい情報を常にキャッチして、先を読んで動くことで、より良い選択ができるようになったのだと思います。」
――リサーチ力とメモの活用力が、今の成長を支えているんですね。ありがとうございます!
誰もが幸せになるビジネスを目指して
――経営者として、日々の仕事で大切にされている信念やモットーがあれば教えてください。
「そうですね、僕が大切にしているのは『全方位で満足度が高いビジネスを目指す』ということです。」
――全方位で満足度が高い、というのはどういうことでしょうか?
「顧客満足度だけを追求するのではなく、関わる誰かが犠牲になるような仕組みを作らないということです。従業員や取引先、さらには社会全体にも配慮しながら、関わるすべての人が満足できる形を目指したいと思っています。」
――なるほど、それはとても素晴らしい考え方ですね!でも実現するのは難しそうに感じますが…。
「そうなんです。正直、理想論になってしまう部分もあるかもしれません。ただ、そういった持続可能な仕組みを作りたいという想いを常に持ちながら仕事に向き合うことが大切だと思っています。最終的には『誰もが幸せになれるビジネス』を目指したいですね。」
小さな楽しみでリフレッシュする自己管理術
――経営とプライベートのバランスを取るために、どのように自己管理をされていますか?
「そうですね、正直なところ、僕はあまり仕事のオンオフをはっきり区別していないんです。その方が自分には合っていると感じています。」
――オンオフを区別しないんですね。それが性に合っているというのも素敵ですね。
「そうなんです。ただ、他の方にはしっかり休みを確保することをおすすめしています。例えば、スケジュール帳に『休みの日』をしっかり記入するだけでも、計画的にリフレッシュするきっかけになりますよね。」
――確かに、スケジュールに組み込むことで意識的に休むことができそうです。
「そうですよね。ぼくも時々リフレッシュを意識していて、カフェに行ったり、次の休日にはお菓子作りを楽しむ予定です。こうした小さな楽しみを取り入れることで、気分転換にもなりますし、また頑張ろうという気持ちになれるんです。」
目的を描き、小さな前進を積み重ねる大切さ
――起業を目指される方へ、何かアドバイスをお願いします。
「そうですね、大切にしてほしいことは3つあります。
1 『目的』と『手段』を明確に分けて、その先のビジョンまで描くこと。
2 自分と異なる視点や価値観を持つ人たちと関わり、視野を広げ、視座を高め、より高い視点から物事を捉える
3 一日の終わりには『出来たこと』に目を向け、小さな進歩を積み重ねること。
特に『出来たこと』を記録しておくと、迷ったときに自分を励ます力になります。一日一日を大切にしながら、挑戦を楽しんでほしいですね。」
――素晴らしいアドバイス、ありがとうございました!
今回は対面でのインタビューでしたが、桂さんは経営者としての器の大きさを強く感じさせる方でした。桂さんが語る言葉の端々から伝わるのは、『このビジネスを通して、自分だけが幸せになっても意味がない』という信念。そして、その根底には、誰かのために尽くしたいという揺るぎない想いがありました。
桂さんは本当に周囲の人々、そしてこれからの日本全体を見据えて行動されている方です。その熱い情熱は言葉だけでなく、全身から伝わってきて、私自身も強く心を動かされました。『こんな経営者やリーダーがもっと増えたら、日本はきっとさらに良い国になる。』そんな未来への希望を抱きながら、桂さんのお話に耳を傾けていました。このインタビューを通して、誰かのために尽くすことの尊さ、そしてその信念を貫く強さを改めて教えられた気がします。
すずかん
福岡県福岡市出身。フリーライター兼シナリオライターとして活動中。趣味はカフェ巡りやハンドメイド、動画編集。地元・福岡をこよなく愛し、福岡で働く魅力や多様な働き方を発信していきたいと考えています!