大衆演劇の役者から転身、 夫婦で営む隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」

東海エリア第2回目となる今回は、名古屋市北区大曽根で隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」を営む勲(いさお)さんの「仕事」についてインタビューしてきました!
「ビストロ葵舎」は、テレビ番組「人生最高レストラン」に俳優・早乙女太一さんが出演した際に、お店を紹介されたことでも有名。名物・パイ生地ピザを筆頭に、どのメニューも本当に美味しいのですが、何よりも勲さんと奥様のきっきさんの人柄が何よりもステキなので、足しげく通う常連さんが多いお店でもあります。
勲さんは、元・大衆演劇の役者という珍しい経歴の持ち主。役者を辞めて、夫婦二人三脚でお店を営むようになった経緯や、将来飲食店を開きたい方へのアドバイス、「夫婦で働く」ことについて詳しくお聞きしました!




勲さん

■プロフィール
福岡県出身、52歳。14歳の頃大衆演劇の劇団に入り、全国各地を回る。17歳の頃、巡業中に奥様・きっきさんと運命的な出会いを果たす。19歳できっきさんとの結婚を機に、役者を辞め飲食の道へ。福岡で5年、名古屋で5年修業後、「ビストロ葵舎」をオープン。お店が火事の被害に遭ったり、さまざまな苦難を乗り越えつつ、2人のお子様を育てあげた。現在、夫婦それぞれ複業をしながら2人でお店を切り盛りしている。

ビストロ葵舎 求人サイトALL WORK

■ビストロ葵舎

 大衆演劇の役者から転身、 夫婦で営む隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」  
 大衆演劇の役者から転身、 夫婦で営む隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」  

イタリアンや創作料理、名古屋めしなどを提供する創業27年の洋風居酒屋・レストラン。「納豆ペペタマ」、「かぼちゃのパイ包み」、「パイ生地ピザ(各種)」など数々の絶品料理が揃う。俳優・早乙女太一さんが「人生最高レストラン」で紹介したメニューは「ハチミツチーズピザ」と「納豆ペペタマ」。お店は大通り沿いにありながら、一見するとおしゃれな個人の住宅といった外観。うっかりすると通り過ぎてしまいそうになるほど。入口階段横の「OPEN」の看板が目印。

大衆演劇の役者から転身、 夫婦で営む隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」
大衆演劇の役者から転身、 夫婦で営む隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」
大衆演劇の役者から転身、 夫婦で営む隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」
「納豆ぺぺタマ」
「かぼちゃのパイ包み」
「ベーコンガーリックPIZZA」
【店舗情報】
住所:愛知県名古屋市北区大曽根1丁目22‐36
営業時間:18:00~24:00頃(※平日は23:00頃閉店する場合もあり)
定休日:月・火
支払方法:現金
予約:可(※LINEもしくはInstagramのDMにて)
公式Instagram
公式X

 

「仕事」を語る上で欠かせない奥様の存在

 

ーーーー「ビストロ葵舎」をオープンするまでにどんな仕事をしていたのでしょうか?

勲さん:僕は福岡の生まれなのですが、家が色々あって14歳で大衆演劇の劇団に入ることになりました。転校もたくさんしましたよ。昔、大曽根に劇場があって、17歳の頃そこの舞台に立つことになりまして。そこへお客さんで来ていたのが、奥さん(きっきさん)。奥さんは地元が大曽根で、その日は知り合いの人に誘われてたまたま来ていたんですね。それで、もう一目惚れ(笑)。19歳で大衆演劇を辞めて、奥さんと結婚しました。

大衆演劇の役者から転身、 夫婦で営む隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」 求人サイトALL WORK

大衆演劇の役者から転身、 夫婦で営む隠れ家レストラン「ビストロ葵舎」 求人サイトALL WORK

ーーーーまさに運命の出会いですね!演劇を辞められたのは何故ですか?

勲さん:何故辞めたかって言うと、「2人でやれることを仕事にしたいな」と思ったからです。それで一緒に僕の地元の福岡に戻ることにしました。福岡の叔父が「飲食やるなら、魚の目利きくらいわからないとダメでしょ」って、天神にある仲買の魚市場を紹介してくれました。ちょっとこれは惚気になるんですが、市場の仕事は朝が早くて2:00とかなんですよ。当時奥さんは1人目の子供がお腹にいたのですが、僕が仕事の日は毎日車で送り迎えしてくれました(照れ笑い)。

ーーーー(惚気話が尊いです……!)

 

勲さん:市場には1年弱いたのですが、やっぱり飲食がやりたかったのと、僕自身もまだ20歳と若く、当時の大人の社会に納得いかないことも多々あって悩んでいました。そんな時、住み込みで働ける名古屋のお店を紹介してもらいました。

 

ーーーー洋食のお店だったのですか?

勲さん:いえ、ちゃんこ鍋と家庭料理的な居酒屋でした。当時流行り出した、居酒屋チェーン店の走りとも言えるお店です。そのお店の息子さんが継いだ後は、ちゃんこ鍋から洋風居酒屋になりました。5年間修業させてもらってから、25歳で独立しました。

 

ーーーー現在の「ビストロ葵舎」の形になるまでにどんなアイディアがあったのでしょうか

勲さん:今でこそビストロですが、最初の頃は串カツ屋がやりたかったです(笑)。でも、昔の大曽根には、老舗の小料理屋さんや居酒屋さんが沢山あったので、僕ら新参者が居酒屋激戦区に参入しても難しいかなと思ったんです。当時、“イタ飯”って言ってイタリアンが流行りだした頃だったのですが、大曽根にそういった洋風のお店がまだなかったので始めました。

 

ーーーー世の中のトレンドを敏感に察知して、他のお店と差別化を図った訳ですね?

勲さん:しかも、その頃の飲み屋さんって、やんちゃな人が多くてあまりガラが良くなかった。洋風のお店だとやんちゃな人は入ってきづらいという利点もありました。

 

  やっとオープンしたお店が火事の被害に

 

勲さん:ところがお店を開けて1年経った時に火事が起きてしまって。2軒隣の家から出た火が燃え移って、お店が半焼しちゃったんです。半焼でよかったですよ。全焼だったら、今頃店を閉めていました。しかも、火事が起きたのが1周年記念をやっている時。3日間やっていたのですが、1日目は盛り上がって、2日目はそこまで盛り上がらず、なにか派手なことでもパーっとやりたいなって思っていたらまさかの火事ですよ。野次馬が集まってきて、違う意味で盛り上がってしまいました(苦笑)。僕は一周年で顔を舞台化粧で真っ黒に塗ってるし、店の上が自宅なんですが、うちの長男と姉の子供がゲームしているところを、慌てて2人共抱えて避難して。その時、奥さんは次男がお腹にいる状態でした。

ーーーー皆さんご無事で何よりでした……!その後はどうなったのでしょうか?

勲さん:お店が営業できないので、収入がなくなるし、修繕費でお金は飛んでいくし、お店の備品は中古が大半だったので、火災保険がほとんど降りませんでした。でも2番目の子供が生まれるわ、火事で住むところも無いわで、これはどうにかしなきゃと。1ヶ月ちょっとくらいで店の応急処置をしてもらって、営業再開しました。でも、やはり劣化はしてくるので4、5年経ってから1度店内のリニューアル工事をしました。



  リニューアルして大曽根の“隠れ家”に

 

ーーーー2023年には外観もガラッとリニューアルされましたね。

勲さん:はい。もともと築100年とかの古い3軒長屋だったんですよ。老朽化で他のお店が立ち退くことになったら、うちだけ建っている訳にもいかないし、ということで大家さんに相談したら譲ってくれることになったんです。

 

ーーーー今のお店はパッと見たら、個人宅にしか見えないので本当に隠れ家ですよね!

勲さん:最近東京では、隠れ家レストランやバーが多いので、そういった流行も積極的に取り入れています。うちは今年(2024年)で、創業27年目になるのですが、ちょっとずつ変化に対応していかないと置いてかれるなぁと思って、日々研究しています。あと、料理の流行も移り変わるので、イタリアンが流行った後はバルブーム、そして韓国ブームと、「葵舎」のメニューにも反映しています。アジアン料理だけはちょっと苦手な
ので、素材として使うことが多いですね。

 

ーーーー仕事をする上で大切にしていることはなんですか?

料理の味はもちろんですが、何よりも“人”を大切にしています。お店を始めた時は僕らと同じくらいの方たちが来てくれて、次にその子供たち世代、さらに僕らの息子世代と、世代交代しながら通い続けてくれるのが嬉しいですね。俳優の早乙女太一君も、役者時代の兄弟子がお父さんで、お母さんは僕と同級生。同じ中学校に通って劇団にも一緒に通っていました。なので、太一君はお母さんのお腹にいる時からうちに通っていました。そのつながりから、去年「人生最高レストラン」で紹介してくれたんです。

「ビストロ葵舎」は、お客様同士や勲さん・きっきさんとの会話が絶えない、楽しい雰囲気が魅力。何よりも“人”を大切にしているということが伝わってきます。


ーーーー
仕事でモチベーションが下がってしまった時はどうしていますか?

勲さん:僕が苦手なところを奥さんが補ってくれて、奥さんの苦手な事は僕が補う。僕の気分がのってないな、という時にはケツを叩いてくれます。僕1人だったら、27年もお店を続けられなかったです。
きっきさん:私はモチベーションが下がることはないですね。仕事が大好きなので。二日酔い以外は一切ないです!(笑)

 

ーーーー夫婦で円満に働くコツは何かあるのでしょうか?

きっきさん:いい意味での我慢と、いい意味での諦め(笑)。
勲さん:求めすぎないことかな。休日に一緒に出掛けても目的地に着いたら、お互い勝手に動いています。お互いの買い物には干渉しない。自分の思ったようになって欲しいと思っても、育った環境も性別も人格も違うのでどこまでいっても無理ですし。17歳で出会ってから33年。家でも店でも毎日戦ってますよ(笑)。お互いに言い合えるからやっていけるんです。あとは、売り上げが上がらない時はどうしてもピリピリしちゃうから、気分転換も兼ねてWワークをしています。僕は昼間、別の飲食店で週3回働いて、奥さんも週1回、別のお店に働きに行っています。収入にもなるし、他の店で得られる刺激や新しい発見があるので、良いですね。

 

ーーーー仕事と家庭を両立させるために行なっていることはありますか?

家庭のために仕事をする、ということです。奥さんと僕、お互い共通しているのは子供が優先順位1位ということ。週1回は、家族4人でご飯食べるようにしています。家族の時間をしっかり取る。そのために仕事を頑張っていますね。

 

ーーーー今後の目標はありますか?

2人の子供も巣立ったので、そろそろ終活も考え出していますが……。とはいえ、今後も毎日お店でお客さんと楽しく過ごせるように頑張りたいです!

 

ーーーー今これから飲食店を始めたい方にアドバイスをお願いします

これから飲食店をやりたい人は、付加価値のあるお店をつくることが大事だと思います。飲食店を始めるハードルは低いけど、よっぽど需要がないとラーメン屋・焼肉屋以外は、すぐ潰れてしまいます。若い人の飲食離れが激しいですから。例えば、鰻屋は「奮発して良い鰻を食べた!」という気持ちになれるから強いと思います。お客様1人1人にとって“特別なもの”が重要視される世の中なので、付加価値について考えることや、時代の変化に柔軟に対応していくことも必要ですね。

 

ーーーーありがとうございました!

言い合いつつも、お互いを尊重しているからこそできる「夫婦で働く」仕事。夫婦間で「家庭のために仕事をする」という共通認識があることが、共に長く仕事を続ける秘訣なのかもしれません。また、お店を長く続けるためには、常に世の中の動きにアンテナを張って、アップデートしていくことも非常に重要だと感じました。そして「ビストロ葵舎」の料理はどれも本当に美味しいのでオススメです!ぜひ予約して食べに行ってみてくださいね。

 

ライター紹介


フクザワマキコ
動物と美味しいものとお酒をこよなく愛すライター。編集プロダクション、某コーヒーチェーン店のストアマネージャーを経てフリーランスに。Yahooニュース記事をはじめ、地域ニュース、キャッチコピー、プレスリリース記事、コラムのライティング等、様々なフィールドで執筆活動を展開中。

【ALL WORK編集部では、にっぽん全国”シゴトのある風景”では、全国各地のライターさんを募集しています】
全国各地、今日もさまざまな場所で、一生懸命に生き、一生懸命に仕事をする人をクローズアップしてご紹介する「にっぽん全国”シゴトのある風景”」では、お住まいのエリアにおいての取材から執筆までが可能なフリーライターさんを募集しています。ライティングの経験は問いません。「いつも一生懸命で輝いているあの人を取材してみたい」と思ったら是非取材をしていただき、編集部まで原稿をお寄せください。ご応募についてはこちらをクリックしてお申し込みをお願いいたします。追って詳細を編集部よりご連絡いたします。

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ALL WORK編集部
ALL WORK JOURNAL、にっぽん全国”シゴトのある風景”コンテンツ編集室。その他ビジネスハック、ライフハック、ニュース考察など、独自の視点でお役に立てる記事を展開します。