近年、様々な形のハラスメントが社会問題として注目を集めており、その種類は40種類以上あると言われています。ハラスメントは職場や学校、SNSなど、私たちの生活のあらゆる場面で起こり得ます。主にパワハラやセクハラなどの「ハラスメント」自体は広く知られていますが、その他にどのような種類があり、どう対処すべきなのかをまとめました。本記事では、現在認識されている様々なハラスメントについて、詳しく解説していきます。
アカデミックハラスメント(アカハラ)|教育現場での権力濫用
アカデミックハラスメントは、教育・研究の場における権力の濫用です。教授や指導教員による学生への不当な扱い、研究活動の妨害、進級・卒業の妨害、研究成果の搾取などが該当します。
【対処法】大学のハラスメント相談窓口を利用することが第一歩です。また、指導教員以外の教員や事務職員に相談することも検討しましょう。記録を残すことも重要で、メールのやり取りや面談の内容などを文書化しておくことをお勧めします。
マタニティハラスメント(マタハラ)|妊娠・出産に関する差別
マタニティハラスメントは、妊娠・出産・育児休業などを理由とする嫌がらせや不利益な取り扱いを指します。「妊娠するなら会社を辞めろ」という発言や、妊娠を理由とした降格、退職の強要などが該当します。
【対処法】まず会社の制度や法律で保護されている権利を確認することが重要です。産前産後休暇や育児休業は法律で保障されている権利です。会社の相談窓口や労働局に相談し、必要に応じて労働組合や弁護士にも相談しましょう。
ジェンダーハラスメント|性別による差別や偏見
ジェンダーハラスメントは、性別による固定観念や偏見に基づく差別的な言動です。「女性だから細かい作業が得意なはず」「男性なら残業くらい当たり前」といった決めつけや、性別を理由とした仕事の配分の偏りなどが含まれます。
【対処法】そのような固定観念に基づく言動が不適切であることを指摘し、職場での意識改革を促すことが重要です。会社の相談窓口や人事部門に相談し、改善を求めることもできます。
スモークハラスメント(スモハラ)|喫煙に関する問題
スモークハラスメントは、喫煙に関連する嫌がらせや迷惑行為を指します。指定された場所以外での喫煙、タバコの煙を故意に非喫煙者に向ける、喫煙後の臭いを気にせず近づくなどの行為が該当します。
【対処法】会社の喫煙ルールを確認し、違反がある場合は上司や施設管理者に報告することをお勧めします。また、喫煙者に対して丁寧に説明し、理解を求めることも重要です。
アルコールハラスメント(アルハラ)|飲酒の強要
アルコールハラスメントは、飲酒を強要したり、酒席での迷惑行為を行ったりすることです。「付き合いが悪い」と言って無理に飲ませる、一気飲みを強要する、酔った上での迷惑行為などが含まれます。
【対処法】はっきりと断る勇気を持つことが大切です。健康上の理由や翌日の予定を理由に断ることもできます。また、会社の飲み会ルールの整備を提案することも有効です。
ソーシャルメディアハラスメント(SNSハラ)|SNSを介した嫌がらせ
SNSハラスメントは、ソーシャルメディアを使った嫌がらせや誹謗中傷を指します。個人情報の暴露、なりすまし、デマの拡散、執拗なメッセージの送信などが該当します。
【対処法】まず証拠を保存することが重要です。スクリーンショットなどで記録を残し、必要に応じてSNS運営会社に報告したり、警察に相談したりすることをお勧めします。また、プライバシー設定を見直し、必要に応じてブロック機能を使用することも効果的です。
音ハラスメント(音ハラ)|音による迷惑行為
音ハラスメントは、近年注目されている新しい形のハラスメントです。大声での会話、音楽や動画の音漏れ、執拗な物音など、音による迷惑行為を指します。特にテレワークの普及により、自宅やシェアオフィスでの音に関する問題が増加しています。
【対処法】相手に丁寧に状況を説明し、改善を求めることが基本です。集合住宅の場合は管理会社に相談することもできます。また、防音対策や騒音計アプリの活用など、客観的なデータに基づいた対応も効果的です。
カスタマーハラスメント(カスハラ)|接客業務における過度な要求
カスタマーハラスメントは、顧客による従業員への暴言や過度な要求、理不尽なクレームなどを指します。「お客様は神様です」という考え方を盾に、過剰なサービスを要求したり、従業員の人格を否定したりする行為が該当します。
【対処法】組織として毅然とした態度で臨むことが重要です。従業員個人で抱え込まず、上司や管理者に報告し、組織全体で対応を検討しましょう。悪質な場合は警察への通報も視野に入れる必要があります。
テクノロジーハラスメント(テクハラ)|技術格差による嫌がらせ
テクノロジーハラスメントは、ITスキルの差を利用した嫌がらせや、技術的な知識の不足を理由とした差別的な言動を指します。「こんな簡単なことも分からないの?」という発言や、必要以上に専門用語を使用して相手を困惑させる行為などが含まれます。
【対処法】分からないことを恥じる必要はないという認識を持つことが大切です。必要に応じて研修の機会を要求したり、マニュアルの整備を提案したりすることも有効です。
エイジハラスメント(エイハラ)|年齢による差別
エイジハラスメントは、年齢を理由とした差別や偏見に基づく言動です。若手社員に対する「若いから」という理由での過小評価や、ベテラン社員に対する「年寄りは使えない」といった決めつけなどが該当します。
【対処法】年齢に関係なく個人の能力や実績に基づいた評価を求めることが重要です。会社の相談窓口や人事部門に相談し、公平な評価制度の整備を求めることもできます。
レイシャルハラスメント|人種や国籍による差別
レイシャルハラスメントは、人種や国籍、民族的背景を理由とした差別的な言動です。外国人従業員に対する差別的な発言、特定の人種や民族に対する偏見に基づく言動、文化的な違いを理由とした排除などが含まれます。
【対処法】文化的多様性を尊重する職場環境の整備を求めることが重要です。差別的な言動があった場合は、会社の相談窓口や人権擁護機関に相談することをお勧めします。
ケアハラスメント|介護に関する嫌がらせ
ケアハラスメントは、介護や看護に関連する嫌がらせや差別的な扱いを指します。介護休暇の取得を理由とした不利益な取り扱いや、「介護は女性の仕事」といった性別役割分担の押し付けなどが該当します。
【対処法】介護休業制度などの法的権利を理解し、必要に応じて活用することが重要です。会社の相談窓口や労働局に相談し、適切な支援を求めることをお勧めします。
ボディハラスメント(ボディハラ)|容姿や体型による差別
ボディハラスメントは、個人の容姿や体型に関する不適切な発言や差別的な扱いを指します。「痩せた方がいい」「太っているから昇進は難しい」といった発言や、容姿を理由とした機会の制限などが含まれます。
【対処法】外見による差別が人権侵害であることを認識し、毅然とした態度で臨むことが重要です。必要に応じて人事部門やハラスメント相談窓口に相談しましょう。
フレグランスハラスメント(フレハラ)|香りによる被害
フレグランスハラスメントは、強い香水や整髪料、体臭などによる周囲への迷惑行為を指します。化学物質過敏症の人々にとっては深刻な健康被害につながる可能性もあります。
【対処法】職場での香りに関するガイドラインの制定を提案することが有効です。また、相手に丁寧に状況を説明し、理解を求めることも重要です。
ドクターハラスメント(ドクハラ)|医療現場での権力濫用
ドクターハラスメントは、医療現場における医師による権力濫用や不適切な言動を指します。患者や看護師、研修医に対する暴言や威圧的な態度、不当な指示などが該当します。
【対処法】医療機関の相談窓口や医療安全管理部門に相談することをお勧めします。また、医療従事者団体や行政の相談窓口を利用することも検討しましょう
まとめ
このように、現代社会には実に様々な形のハラスメントが存在します。重要なのは、どのようなハラスメントであっても、被害を受けた場合は一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談することが大事です。
また、自分自身が知らず知らずのうちに加害者になっていないかを振り返ることも大切です。相手の立場に立って考え、お互いを思いやる気持ちを持つことで、ハラスメントのない、より良い環境やコミュニティを作っていくことができるでしょう。
ハラスメントの問題は、個人の努力だけでなく、組織や社会全体で取り組むべき課題です。一人一人が意識を高め、適切な対応を心がけることで、誰もが安心して生活できる環境を作る必要があります。