近年、テレビや報道でも頻繁に取り上げられるようになった「eスポーツ」。具体的にどんなものなのか、なぜここまで注目を集めているのか、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。今回は、eスポーツの基礎知識から最新事情まで、徹底的に解説していきます。
eスポーツとは?驚きの市場規模と競技人口
eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、コンピューターゲームを使った競技のことを指します。趣味としてのゲームプレイとは異なり、プロのプレイヤーやチームが世界中で競い合い、大きな賞金を懸けた大会が開催されています。
2023年の世界のeスポーツ市場規模は約20億ドル(約3000億円)に達し、2025年までには30億ドル(約4500億円)を超えると予測されています。競技人口も急増しており、世界では約5億人以上のプレイヤーがeスポーツに関わっているとされています。
主流となっているゲームジャンルは、大きく分けて以下の3つです。
まず、「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」や「Dota 2」に代表される「MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)」。5人対5人のチーム戦で、各プレイヤーが特殊な能力を持つキャラクターを操作し、相手の本拠地を破壊することを目指します。特にLoLの世界大会決勝は、同時視聴者数が5000万人を超える など、従来のスポーツに匹敵する人気を誇っています。
次に、「カウンターストライク」や「VALORANT」などの「FPS(ファーストパーソン・シューター)」。こちらも複数人でチームを組み、銃撃戦を繰り広げる競技です。瞬時の判断力と正確な照準が求められ、まさに電子版スポーツの様相を呈しています。
そして、「ストリートファイター」や「大乱闘スマッシュブラザーズ」などの対戦格闘ゲーム。1対1の真剣勝負で、瞬時の読み合いや技の組み立てが重要となります。
その他、「グランツーリスモSPORT」「ぷよぷよ」「テトリス」といった幅広い対戦ゲームにおいても展開されています。
プロプレイヤーの収入は、驚くべき水準に達しています。トップクラスの選手は、年間数億円を稼ぎ出しています。例えば、Dota 2の世界大会「The International」の優勝賞金は40億円を超えることもあり、これは従来のスポーツの賞金を上回る金額です。収入源は大会賞金だけではありません。スポンサー契約、ストリーミング配信の収益、グッズ販売など、多岐にわたります。
eスポーツの魅力と新たな文化・産業の創出
eスポーツの最大の魅力は、その「アクセシビリティ」にあります。従来のスポーツと異なり、体格や性別、年齢に関係なく、誰もが平等に競争できる環境があります。また、インターネットを通じて世界中の選手と対戦できる点も、大きな特徴です。
新しい観戦文化も生まれています。試合はオンラインストリーミングプラットフォームで生中継され、視聴者はチャットを通じて他のファンと交流しながら観戦できます。解説者による詳細な分析や、複数の視点からの映像切り替えなど、従来のスポーツ中継にはない魅力的な要素が満載です。
eスポーツの発展に伴い、新たな産業も続々と誕生しています。専用のトレーニング施設やeスポーツジム、プロゲーマー養成学校などが各地にオープンしています。また、ゲーミングPC、専用チェア、周辺機器など、eスポーツ関連機器の市場も急成長しています。さらに、ヒューマンアカデミーや東京アニメ・声優&eスポーツ専門学校等といった「eスポーツ専門学校」として生徒を受け入れている専門学校もあります。
さらに、eスポーツ専門の解説者やコーチ、マネージャー、イベントプランナーなど、新しい職種も生まれています。従来のスポーツビジネスの知見とIT技術を組み合わせた、新しいビジネスモデルが次々と登場しているのです。
eスポーツオリンピックの開催
2024年7月、オリンピックを主催する国際オリンピック委員会(IOC)は、eスポーツの国際大会「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」を開催することを決定しました。 eスポーツが正式にスポーツ競技として認められ、2025年には、サウジアラビアで初めてのeスポーツオリンピックが開催されるそうです。
eスポーツにおける課題と問題点
eスポーツの発展には、いくつかの重要な課題が存在します。まず、健康面での懸念があります。長時間のゲームプレイによる目の疲れや姿勢の悪化、運動不足などの問題に対して、多くのプロチームが専門のトレーナーを雇用し、適切な運動プログラムを取り入れています。
また、ゲーム依存症の問題も無視できません。特に若いプレイヤーの中には、練習時間の管理ができず、学業や社会生活に支障をきたすケースも報告されています。これに対して、各国のeスポーツ協会は、適切な練習時間のガイドラインを設定するなどの対策を講じています。
さらに、オンラインゲームならではの問題として、チート(不正行為)の存在があります。大会の公平性を保つため、厳格な監視システムやアンチチートソフトウェアの導入が進められています。
年齢制限の問題も重要です。多くの国では、プロゲーマーとして活動できる年齢に制限を設けています。これは若年層の保護を目的としていますが、早期からの才能発掘とのバランスをどう取るかが課題となっています。
今後の展望|更なる成長と進化へ
これらの課題に直面しながらも、eスポーツは着実に成長を続けています。従来のスポーツとeスポーツの境界線は、ますます曖昧になってきています。実際、多くのプロスポーツチームがeスポーツ部門を設立し、両者の融合が進んでいます。
教育分野での活用も注目されており、eスポーツを通じて、戦略的思考力やチームワーク、リーダーシップなどを育成する取り組みが世界各地で始まっています。
また、技術の進歩に伴い、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用した新しい形式のeスポーツも登場すると予想されています。より臨場感のある観戦体験や、新しい競技形式の開発が期待されます。
eスポーツは新しいエンターテインメントの形として、そしてデジタル時代における新しいスポーツとして、その存在感が更に高まっています。