発症のきっかけ、本当のところがわからない
小学3年生での母の死別は、筆者の人生における大きな転換点であったと思う。病名は「胃癌」。病状の進行を見守りながらも最終的な母の死は、幼い心に深い影響を与えたのは確かだが、誤解しないでほしいのは、このきっかけを決して恨んだり一番の原因にするつもりはさらさらない。過去に患ったいわゆる「パニ症」は、もっと別の、自らの思考によって起因されたものから発症したのかもしれないし、わからないからはっきりと断定はしない。しないがその体験や解決法ついて、実体験から沸き起こること全てを記すことで、同じような症状に悩む方々の気が少しでも晴れるなら、参考になるなら、筆者としてはこの上ない幸せである。
人は様々な経験をしながら善悪を見極め、肥やしにし、不必要なものを無意識に削ぎ落としながら1人の人間が形成されていく。その過程の中では、その後の人生に長く影響を及ぼしかねない、注意しなければいけないこともある。筆者の場合、それが「パニック障害」だったのである。「不安神経症」というものもあるようだが、心の不調というものは様々な要因、状況によって症状が合併したり、一概にこの病気という断定は難しい傾向にある。筆者自身はパニック症候群(パニック障害)の括りで話していきたいと思う。
死別直後から心身ともに疲弊し、今から述べるような症状が続くのだが、筆者の場合、小学校高学年、中学へ進むにつれ、発作的な症状はいつの間にか消えていた。
その後、最初の勤務先を退職直後に症状が電撃再発したのは、おそらく「人生の大きな変化」というストレス要因が引き金になったと考えられる。このように、パニック障害は人生の不安を伴う節目節目で再発することがある。
症状や発症状況は極めて個人差があるので、以下に記す内容が全てではない。何らかの解決の糸口になれば幸いである。
基本的な症状
- 動悸:突然の心拍数上昇、胸の締め付け感(何の前触れもなく唐突に現れる)
- 吐き気:実際に嘔吐することはなくても、強い不快感として現れる
- 約15分間の発作:筆者の平均的な発作がこの時間であった。この時間を知っていることで、「必ず終わる」という希望にはなったが…
- 業務への影響:集中力の低下、症状が出た時に思考の混乱が起きることがある。
発症のトリガーとなる状況
1.閉所・狭所での状況:
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- 車内:特に渋滞時や長距離運転時
- 飛行機:離陸前の待機時間が特に厳しい
- 電車:混雑時や長時間の乗車
- 会議室:出口が遠い席や、長時間の会議
2.共通する要素:
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- 逃げ場がない感覚
- 自分でコントロールできない状況
- 周囲の目が気になる環境
トリガー発動によってほぼ100%に近い確率で発作が起きていた時期もあった。当然の如く乗り物に乗るのは苦手になったし、長い会議は集中できないしというある意味で「社会不適合」感が自身をさらに苦しめていた。
そんな中でも、筆者なりに発作時にあらゆる方策を試し、症状を和らげたり落ち着かせたりできた。その対処法、解決法は次の通り。しかしながらこちらもまた人それぞれであり、あくまで筆者が年月をかけて効果があったものを挙げる。
1. 怒りの感情の活用
過去に経験した「怒り」の記憶や、イライラした記憶を思い出し、再び怒りの感情を呼び起こす。
なぜ効果的だったか:
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- 怒りは不安よりも強い「感情」として働く
- 具体的な対象への怒りを思い出すことで、漠然とした不安から焦点がずれ、気づいた時には症状はおさまっている。
- パニ症発症のことで埋め尽くされた状態の頭の中を、別の感情エネルギーへ向けることで気持ちを紛らわせることができる。
2. ツボ押しによる対応
具体的な方法:
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- 手のひらの中心から親指側に向かって、肉厚な部分を探す
- 心地よい圧を加えながら、徐々に強く押す。ゆっくりと押すのがいい。(以下の写真の位置)
- ゆっくりと深呼吸をしながら行うとより効果的
なぜ効果的だったか:
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- 物理的な刺激を与えることによる気の紛れ
- 自分でコントロールできる感覚(というよりはツボを押すことで「楽になれる」という意識が芽生え、効果が出ればそれが安心に繋がる)
- ツボを押すことでの胃の働きへの良い影響(吐き気を抑えることに関しては、このツボ押しに効果があった)
3. 環境のコントロール
会議での対処:
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- 出口に近い席を確保する
- 必要に応じて休憩を取れる体制を整える
- いつでも席を外したっていいと開き直る
- オンライン会議にシフトしていく
移動手段の工夫:
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- 車の運転は自分で行う:コントロール感の維持
- 飛行機の代替手段を検討:新幹線や夜行バスなど
- 電車は混雑時を避ける:時差出勤の活用
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新しい”自己流”の構築
1.自分の状況を認識・受容することの重要性
- 症状を「自分の一部」として受け入れる
- 完璧を求めすぎない
- 自分のペースを守ることを優先する
2. 環境の最適化
生活リズムの調整:
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- 十分な睡眠時間の確保(睡眠不足は非常に危険。最低でも6時間は取りたい)
- 規則正しい食事(過度のアルコール、カフェインは×)
- 適度な運動(筆者の場合は運動不足も要因の一つであったかもしれない)
回復へのプロセス
三者三様のライフスタイルがあり、一概にはなかなか説明ができないのだが、経験した筆者は一つ思うことがある。
それは、「何かに夢中になること」が、心を強くし、発作を忘れさせる原動力になるのではないかということ。結局は自分のネガティブな思考から発生するものであることから、単純に、ポジティブになれる何かに、思考割合を占めていくことが大切なのではないだろうか。筆者の場合はとにかく、「気を紛らわせれば、発作はおさまる」という法則を見出してからは、別の何かに集中することが一番効果的であったように思う。難しいことかもしれないが、小さくても、効果感を得たりするような成功体験を積み重ねるうちに「それ」を忘れることが出来るのかもしれない。
大切なのは、焦らないこと。一時的な後退があっても、それは回復過程の自然な一部だと理解することが重要である。自分のペースを守りながら、着実に前に進んでいくことで、必ず状況は改善する。
最後に
パニック障害は、確かに厄介である。しかし、それは必ず克服できる問題であることも確か。筆者自身、様々な困難を経験しながらも、自己流のその”何か”を見つけ、普通の生活を送れるようになった。
ーー同じように苦しんでいる方々へ。あなたの人生は、誰かの基準や都合に合わせる必要はありません。自分が納得するスタイルを見つけ、それを大切にしていってください。必ず、光は見えてきます。前を向いて歩んでいくその姿が、きっと誰かの希望にもなるはずです。