私たちの周りには、一見すると「才能がある人」と「才能がない人」がいるように見えます。しかし、実は成功を分けるのは生まれ持った才能ではありません。近年の研究で、本当に重要なのは「やり抜く力(Grit グリット)」だということが明らかになってきました。
今回は、このやり抜く力について、最新の研究結果や実例を交えながら、誰でも実践できる具体的な磨き方をご紹介します。
なぜ今、やり抜く力が注目されているのか
ある興味深い研究結果をご紹介しましょう。アメリカの名門、ウェストポイント陸軍士官学校での調査です。入学時の学力テストの成績や運動能力は、卒業できるかどうかとほとんど関係がありませんでした。唯一、強い相関があったのが「やり抜く力」でした。
これは驚くべき発見です。超エリートの集まる軍事教育機関において、頭の良さや体力ではなく、やり抜く力が成功を決定づけていたのです。
実は、この現象は士官学校に限った話ではありません。企業での昇進、起業の成功率、結婚生活の継続など、人生の様々な場面で同じような結果が報告されています。
やり抜く力とは何か?その正体
やり抜く力の本質は、「長期目標への情熱と粘り強さの組み合わせ」です。
ただし、ここで誤解してはいけないのが、単なる「我慢」とは全く異なるという点です。例えば、嫌いな仕事を歯を食いしばって続けることは、やり抜く力とは呼べません。
重要なのは「情熱」という要素です。自分が本当に達成したいと思える目標に向かって、困難があってもあきらめずに進み続ける。それがやり抜く力の本質なのです。
やり抜く力が効果を発揮する意外な場面
私の友人にとある料理人がいます。彼はあるレストランで働いていましたが、ある日突然、辞めてしまいました。理由を聞いたら「本当に作りたい料理ができない」から。彼は、自分の理想とする料理を追求するため、小さな町で一人店舗を始めました。
最初の1年は本当に苦しかったようです。お客さんがほとんど来店せず、何度も閉店の危機がありました。しかし彼は、自分の信じる料理を作り続けました。
そして開店から3年後、その店は地元で最も予約の取れない店となりました。さらに、全国的なグルメ系雑誌でも取り上げられるようになったのです。
この友人が持っていたのが、まさに「やり抜く力」であったと感じます。単に我慢して続けたのではなく、自分の「理想の料理」という情熱があったからこそ、困難を乗り越えることができたのです。
やり抜く力を身につけるための具体的な方法
では、このやり抜く力はどうすれば身につけることができるのでしょうか?
実は、やり抜く力は生まれ持った才能ではありません。適切な方法で訓練することで、誰でも伸ばすことができるのです。
1. 小さな成功体験を積み重ねる
まず重要なのが、小さな成功体験を積み重ねることです。
例えば、「毎日5分だけ資格の勉強をする」という小さな目標から始めてみましょう。これなら誰でも続けられますよね。この小さな目標を1週間達成できたら、次は「10分」に増やします。
このように、少しずつハードルを上げていくことで、自然とやり抜く力が育っていきます。
2. 「なぜ」を明確にする
目標達成が困難になったとき、多くの人は「どうやって」に焦点を当てがちです。しかし、本当に重要なのは「なぜ」なのです。
先ほどの料理人の例でいえば、彼は「なぜ自分はこの料理を作りたいのか」という理由を常に心に持っていました。それが、困難な時期を乗り越える力となったのです。
3. 失敗を学びに変える習慣をつける
やり抜く力の高い人には、共通した特徴があります。それは、失敗を「終わり」ではなく「次への学び」と捉える習慣です。
例えば、営業活動で成約がなかなか取れないとき、多くの人は「営業は自分には向いていないな」と諦めてしまいます。しかし、やり抜く力の高い人は「なぜ上手くいかなかったのか」を分析し、次に活かそうとします。
やり抜く力が変える未来
最近の研究では、AIの発達により多くの仕事が自動化されると言われていますが、やり抜く力は機械には真似できない、人間独自の能力です。
むしろ、変化の激しい現代社会では、やり抜く力の重要性は増していくでしょう。新しい技術や環境に適応し続けるためには、学び続ける意志と能力が必要不可欠だからです。
最後にーやり抜く力の真の価値
やり抜く力の真の価値は、単に目標を達成できることではありません。それは、自分自身の可能性を信じ、諦めずに挑戦し続けられる人生を送れることにあります。
そして、やり抜く力を身につけることで得られる最大の報酬は、「自信」です。困難を乗り越えた経験は、次の挑戦への自信となります。その自信があれば、どんな困難な状況でも「なんとかなる」と信じることができるのです
あなたも小さな一歩を踏み出してみませんか?それが、やがて人生を大きく変える一歩となるかもしれません。