「バレない」と考える不倫する人の自己正当化のプロセスとは|スマホ時代が生んだ危険な錯覚

「バレない」と考える不倫する人の自己正当化のプロセスとは|スマホ時代が生んだ危険な錯覚

スマホが開けたパンドラの箱

現代社会において、不倫は決して珍しいものではなくなってしまった。むしろその敷居は驚くほど低くなっている。かつては「出会い」そのものにハードルがあった時代から、今やスマホ一つで無数の出会いが転がり込んでくる時代へ。マッチングアプリ、SNSのDM機能、趣味のコミュニティアプリなど、不倫の温床となるツールは枚挙にいとまがない。

これほどまでに不倫が発覚するニュースが後を絶たないにもかかわらず、「自分だけはバレない」と考える人々が後を絶たないという事実がある。芸能人の不倫スキャンダルが週刊誌を賑わし、SNSで炎上する様子を目の当たりにしながらも、なぜ人々は「自分は大丈夫」という危険な確信を抱いてしまうのだろうか。

本コラムでは、不倫に走る人々の心理メカニズム、特に「バレないだろう」という楽観的な思考に至るまでの自己正当化のプロセスを、現代のデジタル環境と絡めながら徹底的に解剖していく。

「匿名性の幻想」




スマートフォンは、人間に不思議な錯覚をもたらす。手のひらサイズの画面の中で繰り広げられるやり取りは、どこか現実世界と切り離された別の空間のように感じられるのだ。LINEの非表示機能、アプリのロック機能、シークレットモードのブラウザ――これらの機能は確かに一定のプライバシーを守ってくれるが、同時に「隠せる」という錯覚を強化してしまう。

特に危険なのは、マッチングアプリやSNSが持つ「心理的距離感の短縮効果」である。画面越しのメッセージのやり取りは、対面での会話よりもはるかに心理的ハードルが低い。深夜にベッドで配偶者の隣に寝転びながら、見知らぬ異性とメッセージを交わす。この奇妙な状況が、当事者にとっては「まだ何も起きていない」という言い訳の余地を残す。実際に会うまでは不倫ではない、身体的関係を持つまでは浮気ではない――こうした段階的な自己正当化が、デジタル空間では実に容易に進行していくのだ。

さらに、アプリ内でのやり取りは「証拠が残らない」という錯覚も生み出す。メッセージを削除すれば消える、アプリをアンインストールすれば痕跡が消える。しかし実際には、サーバー上にデータが残っていたり、スクリーンショットを撮られていたり、クラウドにバックアップされていたりと、デジタルの世界は想像以上に「記録」に満ちている。にもかかわらず、目の前から消えたものは存在しないという認知バイアスが、「バレない」という確信を強化してしまうのである。




「自分は特別」という認知の歪み――楽観バイアスの罠

心理学の世界には「楽観バイアス」という概念がある。これは「悪いことは他人には起こるが、自分には起こらない」と考える人間の普遍的な傾向を指す。交通事故に遭う確率を尋ねられると、多くの人が統計的確率よりも低く見積もる。病気になる可能性も、離婚する可能性も、そして不倫がバレる可能性も、人は自分に限っては低いと考えがちなのだ。

不倫に走る人々の多くは、まさにこの楽観バイアスの典型的な犠牲者である。週刊誌やワイドショーで報じられる不倫スキャンダルを見ながら、「あの人は脇が甘かった」「自分ならもっと慎重にやる」と考える。他人の失敗を教訓として学ぶのではなく、「自分はもっと賢い」という根拠のない自信を強化する材料にしてしまうのだ。




この心理はさらに深刻な段階へと進化する。最初は「絶対にバレないようにしよう」と慎重だった人が、時間が経つにつれて「今までバレていないのだから、これからもバレない」という確信を深めていく。成功体験の積み重ねが、かえって油断を生むのである。デートを重ねるごとに、密会の回数が増えるごとに、「自分のやり方は完璧だ」という錯覚は強化されていく。そして、ある臨界点を超えたところで、思わぬ綻びから全てが崩壊する。

多くの不倫発覚のケースを分析すると、当事者たちは「まさかそんなところから」という予想外のルートでバレている。配偶者の直感、たまたま目撃されること、SNSの位置情報、クレジットカードの明細、ホテルの防犯カメラ――人間の想像力には限界があり、「想定外」を完全に排除することなど不可能なのだ。しかし楽観バイアスに囚われた人々は、この当たり前の事実を見落としてしまう。

段階的な自己正当化――小さな一歩が大きな崖へ




不倫に至るプロセスは、多くの場合、劇的な決断の瞬間ではなく、小さな逸脱の積み重ねである。この「段階的エスカレーション」こそが、最も危険な自己正当化のメカニズムだと言えるだろう。

最初は「ただの友達として話すだけ」から始まる。マッチングアプリで何気なくプロフィールを眺めること、SNSで魅力的な異性のアカウントをフォローすること、オンラインコミュニティで趣味の話で盛り上がること。この段階では、本人も「まだ何もしていない」と完全に確信している。そして実際、この時点では確かに「何もしていない」のだ。

しかし次第に、メッセージの頻度が増え、内容が個人的になり、深夜の時間帯にもやり取りするようになる。この段階でも「ただの友人」という建前は維持される。配偶者や家族の愚痴を言い合い、お互いの悩みを共有し、精神的な繋がりを深めていく。ここで重要なのは、当事者が「肉体関係がなければ不倫ではない」という都合の良い定義を採用していることだ。

そして「一度だけ会ってみよう」という段階に進む。カフェでのランチ、仕事帰りの軽い飲み、共通の趣味のイベント参加――これらは全て「友達としての範囲内」だと自分に言い聞かせられる。しかし、この時点で既に精神的な親密さは配偶者を超えている場合も多い。秘密を共有すること自体が、二人の間に特別な絆を作り出してしまうのだ。




次に訪れるのが物理的な接触である。最初は偶然を装った手の触れ合い、慰めのハグ、そして「つい」のキス。この「つい」という言葉は実に便利で、計画性を否定し、衝動的で制御不能だったという言い訳を可能にする。そして最終的に肉体関係へと進んだとき、多くの人は「もうここまで来てしまった」という諦めと、「今さら引き返せない」という埋没費用の誤謬に囚われる。

このプロセスの恐ろしさは、各段階で「前の段階と比べれば大した違いではない」と感じられることにある。メッセージを送るのと会うことの差、会うことと身体的接触の差、それぞれは小さな一歩に感じられる。しかし振り返れば、スタート地点からは途方もない距離を移動してしまっているのだ。そして各段階で「バレないように注意している」という自己管理の感覚が、全体としての危険性を見えなくさせてしまう。

SNS時代特有の罠――「承認欲求」という落とし穴

現代の不倫を語る上で欠かせないのが、SNSが生み出す承認欲求の問題である。人間は本質的に「認められたい」「特別扱いされたい」という欲求を持つ生き物だが、SNS時代はこの欲求を異常なまでに肥大化させてしまった。




結婚生活が長くなれば、配偶者からの賞賛や驚きは減っていく。これは当然のことで、慣れ親しんだ相手に対して常に新鮮な感動を抱き続けることは難しい。しかしSNSの世界では、新しい出会いが常に「いいね」と称賛を運んでくる。投稿した写真に即座に反応があり、メッセージには絵文字付きの熱心な返信が返ってくる。この即時性と新鮮さが、家庭での平凡な日常と対比されたとき、人は危険なほどに魅力を感じてしまう。

特に危険なのは、SNSでの「理想化された自己」を演じられることだ。家庭では疲れた中年男性、家事に追われる妻という現実の姿も、SNSでは趣味に打ち込む魅力的な個人、知的な会話ができる教養人として振る舞える。新しい相手は自分の「良い面」だけを見てくれる。配偶者のように欠点も失敗も知らない相手からの賞賛は、実に心地よいものだ。

ここで「バレない」という確信が生まれる心理メカニズムは興味深い。SNS上でのやり取りは、あくまで「公開された範囲内」での交流だという言い訳が可能なのだ。鍵アカウント同士の繋がり、ストーリーの限定公開、DM機能の活用――これらは全て「プライベートだが秘密ではない」という曖昧な領域を作り出す。そして当事者は「オープンにやっているのだから後ろめたいことはない」と自己正当化する。しかし実際には、配偶者に見せられないやり取りをしている時点で、それは明確な秘密なのである。

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