α世代(アルファ世代)が辿るこれからの人生とは|難しい時代の日本で彼らはどう生きるべきか

α世代(アルファ世代)が辿るこれからの人生とは|難しい時代の日本で彼らはどう生きるべきか

α(アルファ)世代の未来はどうなっていくのか

ゆとり世代、さとり世代、Z世代。世代に名前をつけるのは、いつの時代も大人たちの役目である。そして2024年、また新しい世代の名前が定着しつつある。α(アルファ)世代だ。

2010年から2024年に生まれた子どもたちを指すこの世代は、人類史上初めてその全生涯がデジタル時代に包まれる世代となる。彼らが産声を上げたとき、すでにスマホは存在し、SNSは日常の一部であり、AIは急速に進化を遂げていた。生まれたときから「つながっている」ことが当たり前の世代なのである。

しかし、この華々しい技術的背景とは裏腹に、α世代が生きる日本という国の姿は、決して明るいものばかりではない。むしろ率直に言えば、彼らが背負わされる荷物はあまりにも重い。人口減少、経済停滞、地政学的緊張、気候変動。私たち大人が先送りにしてきた課題が、まるで時限爆弾のように彼らの未来に埋め込まれている。

この論説コラムでは、α世代がこれから辿るであろう人生を、できるだけ現実的な視点で見つめてみたい。悲観的になりすぎず、しかし楽観的すぎることもなく、彼らが直面する困難と、それでもなお見出せる希望について考えてみる。

生まれ落ちた時代──2010年代の日本

α世代の最年長組が生まれた2010年、日本はすでに「失われた20年」を経験していた。バブル崩壊から20年が経過し、経済成長は鈍化し、デフレが常態化していた。この年、日本のGDPは中国に抜かれ、世界第3位の経済大国に転落した。象徴的な出来事だった。

2011年には東日本大震災が発生し、福島第一原発事故という未曾有の災害が日本を襲った。α世代の子どもたちの中には、この震災の記憶を持たない者も多いだろうが、この出来事は日本のエネルギー政策や防災意識、そして社会の在り方そのものを根本から変えた。彼らが成長する過程で目にする「復興」という言葉の裏には、このときの傷跡が今なお残っている。

そして2019年末から始まったCOVID-19パンデミック。α世代の子どもたちは、人生の重要な時期をマスク越しに過ごすことになった。幼稚園や小学校での友達との触れ合い、給食の時間、運動会や修学旅行。当たり前だったはずの日常が、突如として「特別な配慮が必要なもの」に変わってしまった。この経験は、彼らの社会性やコミュニケーション能力に、私たちがまだ完全には理解していない影響を与えているかもしれない。

人口減少という静かな危機

α世代が最も深刻に向き合わなければならない課題の一つが、人口減少である。日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、現在は毎年50万人以上のペースで減り続けている。

α世代が20歳になる頃は、日本の人口は1億1000万人を切り、彼らが40歳になる頃には1億人を割り込むと予測されている。深刻なのはその人口構成だ。2050年には3人に1人が65歳以上という超高齢社会が到来する。つまり、α世代は圧倒的に少ない若年労働力で、かつてない規模の高齢者層を支えなければならないのである。

この現実は、彼らの生活のあらゆる面に影響を及ぼす。社会保険料の負担は増え続け、可処分所得は減少する。年金制度は実質的に破綻寸前であり、彼らが老後を迎える頃には、自分たちの老後は自分たちで完全に賄わなければならなくなっているかもしれない。

さらに言えば、人口減少は地方の衰退を加速させる。α世代が成長する過程で、多くの地方都市は消滅の危機に瀕するだろう。彼らの中には、故郷がなくなるという経験をする者も出てくるはずだ。もはやスルーできる経済問題ではなく、アイデンティティの喪失という精神的な問題でもある。

経済停滞の中で育つということ

α世代は、経済成長を知らない世代になる可能性が高い。日本経済は1990年代から30年以上にわたって低成長を続けており、この傾向が彼らが社会に出る頃に劇的に改善される見込みは、残念ながら薄い。

彼らの親世代であるミレニアル世代Z世代ですら、バブル期の好景気を知らない。α世代にとっては、経済成長とは教科書の中の出来事であり、給料が毎年上がるという感覚は最初から存在しないかもしれない。

実質賃金の低下も深刻で、物価は上昇するのに給料は上がらない、あるいは上がっても物価上昇に追いつかないという状況が続いている。α世代が就職する頃、この状況はさらに悪化している可能性もある。彼らは「働いても豊かになれない」という現実と向き合わなければならないだろう。

加えて、日本企業の国際競争力の低下も無視できない。かつて世界を席巻した日本の電機メーカーは今や見る影もなく、自動車産業も電気自動車へのシフトで苦戦している。α世代が社会に出る頃、日本を代表する企業の顔ぶれは大きく変わっているかもしれない。あるいは、日本企業そのものが国際舞台での存在感を失っているかもしれない。

地政学的緊張の高まり

少々気難しい話になるが、α世代が生きる時代は、地政学的にも極めて不安定である。中国の台頭、米中対立の激化、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアのウクライナ侵攻。世界は新たな冷戦とも呼べる状況に突入しつつある。

日本は地理的に、この緊張の最前線に位置している。台湾海峡での軍事的緊張は年々高まっており、α世代が成人する頃、この地域で何らかの軍事的衝突が発生している可能性は決して低くない。彼らは、戦後日本が経験したことのない「戦争が身近にある時代」を生きることになるかもしれない。平和憲法の下で育った前の世代とは、まったく異なる現実に直面するのである。

さらに、経済安全保障の観点からも、日本は難しい立場に置かれている。中国への経済依存度は高く、しかし安全保障上は対立関係にある。この矛盾した関係の中で、日本企業は戦略的な判断を迫られ、そこで働くα世代の人々も、複雑な国際情勢を理解し、対応していかなければならない。

気候変動という逃れられない現実

α世代は、気候変動の影響を最も深刻に受ける世代でもある。彼らが成長する過程で、猛暑日の増加、豪雨災害の頻発、台風の大型化といった現象はさらに顕著になるだろう。

2050年のカーボンニュートラル達成という目標に向けて、日本社会は化石燃料からの脱却、再生可能エネルギーへの転換、循環型経済の構築がなされ、α世代の生活様式や職業選択に直接的な影響を与える。

彼らが就く仕事の多くは、気候変動対策と何らかの形で関連しているだろう。グリーンテクノロジー、環境コンサルティング、サステナビリティ・マネジメント。新しい職業が生まれる一方で、化石燃料関連産業などの従来型産業は縮小していく。α世代は、この産業構造の大転換の渦中で職業人生を送ることになる。

また、食糧安全保障の問題も深刻化する可能性がある。気候変動による農業生産への影響、水資源の枯渇、海洋資源の減少。α世代が中年になる頃、食料の安定供給は今ほど当たり前のことではなくなっているかもしれない。

デジタルネイティブを超えて──AIネイティブ世代

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一方で、α世代には前の世代にはない強みもある。それは、彼らがデジタルどころかAIネイティブである、という点だ。

彼らが物心ついたときには、すでにAIアシスタントは存在し、ChatGPTのような生成AIは日常的なツールになっている。彼らにとって、AIに質問し、AIと協働するのは呼吸するのと同じくらい自然なことだ。この感覚は、デジタルネイティブと呼ばれたZ世代とも明確に異なる。

この能力は、混沌とした時代を生き抜く上で大きな武器になる。複雑な情報を処理し、最適な判断を下すためにAIを活用する。クリエイティブな仕事においてもAIを協働者として使いこなす。α世代は、人間とAIの共生という新しいワークスタイルを、誰よりも自然に実践できる世代なのである。

また、教育の分野でも変化が起きている。α世代は、個別最適化された学習を受けられる最初の世代になるかもしれない。AIが一人ひとりの理解度や興味に合わせて学習内容を調整し、効率的に知識を習得できる。暗記中心の教育から、思考力や創造性を重視する教育への転換も、彼らの世代で本格化するだろう。

働き方の革命──もはや会社に縛られない

終身雇用や年功序列といった日本型雇用システムは、彼らが社会に出る頃にはほぼ完全に崩壊しているはずで、代わりに、フリーランス、ギグワーカー、複業といった柔軟な働き方が主流になる。一つの会社に一生を捧げるという発想自体が、α世代にとっては古臭いものに映るだろう。彼らは自分のスキルを磨き、それを必要とする企業やプロジェクトに参加するという形で、キャリアを構築していく。

リモートワークの普及も、彼らの働き方を大きく変える。物理的な場所に縛られることなく、どこからでも働ける。地方に住みながら東京の企業の仕事をする、あるいは日本にいながら海外企業のプロジェクトに参加する。こうした働き方が、α世代にとっては標準になるはずだ。

ただし、これは必ずしもバラ色の未来を意味しない。雇用の流動化は、同時に雇用の不安定化でもある。α世代は常にスキルアップを求められ、市場価値を維持するために学び続けなければならない。「安定」という概念そのものが、彼らの時代には存在しなくなるかもしれない。

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