北海道の南東部に位置する十勝地方。畑作や酪農が盛んなこの地は、食料自給率がカロリーベースで約1,100%にも達し、日本の「食料基地」として知られています。
十勝地方の中心都市である「帯広市」に店舗を構える「おむすび処はな」。こだわりの素材を積極的に取り入れつつも、手頃な価格でおむすびを提供するこのお店は、地元の人々に愛される存在です。
店主の宮川さんは、会社員として働きながら一念発起し飲食業界に経営者として挑戦した経歴の持ち主。「ALL WORK」では、開業のきっかけやおむすびへの想い、そして飲食店経営を進める中でぶつかった困難への向き合い方についてうかがいました。
◾️プロフィール
2020年5月に会社員として働きながらおむすび専門店「おむすび処はな」を開業。 どこかホッとする味わいのおむすびを提供し続け、地域に愛されるお店を築いてきた。2024年には勤めていた企業を退職し、おむすび屋さんの経営に専念。 お客様からの「おいしかったよ」の声を励みに、日々心を込めておむすびを握り続けている。

おむすび屋さんを始めたきっかけ

― おむすび屋さんを開いたきっかけを教えてください。
もともとはおひとり様でも気兼ねなく立ち寄り、日替わり定食を楽しめるお店を作ろうと思っていたんです。
しかし開店準備中だった2020年3月、コロナ禍に伴う緊急事態宣言が発令されて、状況が一変しました。イートイン中心の定食屋を開業するのが困難になったため、短期間で事業内容を見直す必要に迫られたんです。
そのとき、「何かテイクアウトで提供できる食事はないだろうか」と考え、もともとは定食とセットで出す予定だったおむすびを主役にしようと思い付きました。
私自身、おむすびが好きだったし、当時、帯広におむすび専門店が少なかったことも決断の後押しになりましたね。
― お店のコンセプトについて教えてください。
「フラッと立ち寄れるお店」ですかね。お客様の都合に合わせて、テイクアウトだけじゃなくイートインも楽しめるようなお店にしています。「作りたてのおむすびをその場で食べられる場所があれば、喜んでもらえるのではないか?」と思ったのがきっかけです。
コロナ禍を機におむすび専門店に切り替えましたが、もともと定食屋を想定して借りた物件だったため、せっかくのイートインスペースを活用したかったところもありますね。
― 実際にイートインスペースを利用されるお客様も多いのですか?
はい、全体の3分の1ほどのお客様がイートインスペースを利用されています。お昼休みに近隣のオフィスから歩いて来て食事をされる、顔馴染みのお客様も多いですね。当店での食事が、働く方の日常生活の一部になっている気がして、すごく嬉しいです。
おむすびのこだわり

― 「おむすび処はな」のおむすびのこだわりを教えてください。
「おいしくて体に優しい」ものを提供したいと考え、素材選びにはこだわっています。海苔は国産、塩は無添加のヒマラヤ岩塩、お米は北海道産の「ゆめぴりか」を使っていますね。
特にお米選びには時間をかけました。いろいろなお米でおにぎりを作り、食べ比べをしたうえで、冷めても「もちもち」した食感が保たれていたのが「ゆめぴりか」でしたね。
― すごい、食べ比べまでして選んだんですね!
はい、お米屋の五つ星お米マイスターさんと相談して、おむすびに使うお米を厳選しました。
― お米マイスター!?そんな資格があるんですね。
お米の選び方や炊き方に詳しいプロの方です。お米マイスターからは、ガス釜を使ったお米の炊き方も伝授していただきましたね。ガス釜で炊いたご飯は甘みも食感も良くて、おむすびにぴったりなんです。
―炊飯器ではなく、ガス釜で炊かれたご飯で作られたおむすびが食べられるのは魅力ですね。握り方にも工夫がありますか?
はい、ふんわりと握るようにしていて、固くならないように意識しています。
―もしかして その握り方って、企業秘密だったりしますか?
秘密というわけじゃないんですが、経験で得た手の感覚を言葉で表すのは難しいですね。多分見よう見まねでやっても、すぐにはこのふっくら感は出せないと思います(笑)。
会社員から飲食店経営への転身

― 宮川さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
もともとは長い間、会社員として営業職をしていました。「おむすび処はな」をオープンした後も、今年(2024年)の4月までの4年間は、会社員とおむすび屋さんとを兼業していたんですよ。
― ええ!飲食店経営をしながら会社員もされていたんですか?それはすごいですね。
はい。会社員のほうは週1〜2日の出社義務があるだけで、あとは自分でスケジュールを組んで、仕事をこなす働き方だったので、なんとか両立できていましたね。
― 自営業と会社員を兼業するなんて、並大抵のことではないですよね。エネルギッシュに働く宮川さんの原動力は何でしょうか?
飲食店を4年以上続けられたのは、やっぱり「料理が好き」という純粋な気持ちがあったからだと思います。あとは、イートインを利用してくださったお客様が「美味しかったわ」と声をかけてくださる瞬間ですね。それが一番嬉しいですし、また頑張ろうと思える原動力になっていますね。
― お料理を楽しむ気持ちやお客様の喜ぶ姿が、宮川さんが働くための活力になっているんですね。
はい、その通りです。
おむすび屋さんを経営する苦労と喜び
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